人生が楽しい

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勧めろ!!グロ・ホラー苦手人間のためのゾンビ・ソフトランディング

 世のゾンビ映画大好きボンクラ男子諸君は、一度はこういう欲望を抱いたことはないだろうか?「カワイイあの娘と一緒にゾンビ映画が観たい!」と。しかし悲しいかな、中川翔子や故・紅音ほたるのようにゾンビ映画を楽しく観てくれる女神の如き女子はほんの一握りで、大抵の女の子達はゾンビ映画など誘おうものなら「私グロいのとか無理で…」とやんわり断られるか、若しくは「キモイ」「死ね」と罵詈雑言を叩きつけてくるだろう。そうと分かっていながら、しかし自分の愛するものを理解してもらいたい、一緒に楽しみたいと思ってしまうオタク心理には頷ける。何を隠そう、この僕もそう考える筆頭だ。そこで、今回は、僕が普段頭の中でグフグフと練っている、ゾンビに馴染みのない人間をゾンビ道に引きずり込むためのソフトランディング・プランをご提案させてもらおうと思う。

 

 さてでは、普段ゾンビ映画を観ないタイプの人間に、一番に何を見せるべきだろうか?日本人には馴染みの深い俳優陣が揃った「アイアムアヒーロー」か?いや、これは否だ。主演に大泉洋、ヒロインには有村架純長澤まさみを登用し、端役には風間トオル片桐仁メイプル超合金などが名を連ね、ここだけ見ればいかにも大衆向けな香りだが、この映画はゾンビのデザインがめちゃめちゃ怖く、グロ描写もかなり容赦がない。この僕ですら観るのに少し勇気が要るほどである。実際、映画館で観たときはカップル客の女性が怖くて泣き出す声が周りから大発生しており、映画館を出た後の2人の空気を思うと切なくて切なくて…。もちろん映画としてはウルトラ面白いのでいずれは是非観てほしいが、一発目に持ってきてしまってはトラウマ必至である。

 

 では、ゾンビ映画として圧倒的なネームバリューを誇る「バイオハザード」か?これもダメである。私事だが、僕はシリーズ6作品をすべて見せたうえで、「どれが一番面白かった?」と聞き、相手が「2」以外を挙げると反射的に拳が出てしまう体質だからだ。

 

 ここでは、僕は「ウォーム・ボディーズ」を推したい。

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 ゾンビと人間との恋を描いたラブストーリーで、グロ描写はほぼほぼ皆無。主要キャラは生きた美女とイケメンゾンビとで目ざわりも良く、最終的に皆が幸せになるエンディングには心温まる。デート向きですらあると思えるこの映画なら、まず女子に抵抗感を与えることはないだろう。また、一般的に持たれているであろうゾンビ映画の「グロいだけ」「薄い」「マニア向け」といった先入観を、不意のアプローチで打ち砕くことが可能だ。「こういうのもあるんだ」と思わせた時点で、この勝負はこちらの勝ちである。

 

 さて、これを見終えたなら次は「ライフ・アフター・ベス」「ゾンビヘッズ 死にぞこないの青い春」だ。

 前者は生きた男とゾンビ化した彼女の話、後者はゾンビとなった男が生前の婚約者に再びプロポーズしに行く話で、「ウォーム・ボディーズ」よりもコメディ感が強い。このあたりから少しだけ血の量が多くなるが、それでもゾンビ映画という括りでは無いに等しい量であろう。ゾンビ以前に、人に映画を勧めるなら当然面白くなくてはならない。この2作は、ラブ要素もコメディ要素も上手く、広く誰にでも勧められる作品だ。

 

 3本も観れば、そろそろ死体が人間を食うことの違和感は薄れてくるだろう。次は、津々浦々で人気を勝ち取った大作で攻めてみよう。「ワールド・ウォー・Z」と「新感染 ファイナル・エクスプレス」だ。

 これまでの3本と比べると一気にホラー感が増し、シリアスな展開でより恐怖という方向に観るフォーカスが動いていくが、誰もが満足できる安定した面白さと意外に低いゴア度が魅力だ。どちらも「家族を守る戦い」が物語の中心となりファミリーにも勧められる映画だし、「WWZ」の主演ブラッド・ピットを知らない者はまずいないだろう。「新感染」の魅力については、こちらで語った通りだ。→

ちょっ………と良すぎません?「新感染 ファイナル・エクスプレス」 - 人生が楽しい

 グロだけでなくホラーにも耐性がない方々にも、是非とも楽しんでいただきたい2本だ。

 

 ここらで、少しだけ血の量を増やしてみたい。「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ゾンビランド」「ゾンビーノ」「ロンドンゾンビ紀行」「カリフォルニアゾンビ逃避行」だ。

 5本に共通して言えるのは、どれもコメディ要素の強い作品であること。これらに登場するゾンビ達は、「ウォーム・ボディーズ」や「ライフ・アフター・ベス」に比べるとかなりゾンビゾンビしており、人間を食べるシーンも多めかつしっかり見せつけてくるが、コメディ要素がオブラートとなり、一瞬は目を背けても、映画単位では楽しんで観てもらえるだろう。特に「ショーンOTD」「ゾンビランド」は日本でも知名度の高い作品であるし、「ゾンビーノ」の少年とゾンビの友情は観る者の心を癒してくれる。「カリフォルニアゾンビ逃避行」は、邦題のせいで「ロンドンゾンビ紀行」のヒットにあやかったパクリ作と思われがちだが、実際はプロットも全然違うししっかり面白い作品だ。人を食べるシーンのせいで観客を限定するが、だからといって観ないのはあまりに惜しい良作である。ここまでのステップでゾンビへの抵抗を薄れさせ、この5本へと導くことは、感謝すらされ得ることだと僕は信じている。

 

 ここまで観れたらもう食人描写の耐性はかなりついてきているはずだ。ラブ、コメディ、ファミリー要素の次は、アクションでゾンビを魅せよう。「ドーン・オブ・ザ・デッド」「プラネット・テラーinグラインドハウス」「ランド・オブ・ザ・デッド」辺りはどうだろうか。

 ここまでのゾンビコメディ中心のご紹介から一転、完全にホラー映画の枠に踏み込む。ただし、「死霊のえじき」のようなジメジメとした映画とは違い、ハイテンポなアクションが清涼剤となってくれるはずだ。ゾンビ化した胎児、腐り落ちる男性器など、ブラックかつ過激なネタも登場してくるが、ここら辺への耐性も「ショーンOTD」辺りで付けてくれていると信じたい。また、ここで初めてロメロ作品をひとつ挙げてみた。「ランドOTD」は大きいスケールと多めのアクションシーンがロメロ作品の中でも比較的口当たりを良くしてくれているし、ロメロの主張の部分が最も汲み取りやすい作品だと思っている。この辺で、そろそろロメロの味も覚えてもらおうという寸法だ。

 

 さて、いよいよ最終段階だ。ホラー要素の強いゾンビ映画の名作として、「REC」「28週後…」を推してみたい。

 おめでとう。ここまでの映画を彼女にすべて見せることに成功した諸君は、もう立派なゾンビファンを一人作り上げたと思って良かろう。育成プログラムの修了証明書として、この2本を捧げたい。安定感のある良作で、ゾンビ映画を探している人間は必ず通るであろうこの2本、僕はこの2本を喜んで観てくれる女の子を探すためにこの記事を書いていると言っても過言ではない。

 

 熱心なゾンビファンであれば、ここまでお読みいただいたうえで、「ロメロとフルチは見せなくていいの?」とお思いになることもあるだろう。確かにロメロとフルチは基本中の基本だが、やや渋みが強かろう。現代、映画館に足繁く通う人間に黒澤明を見せて、果たして喜ぶだろうか?現代のアニメファンに「鉄人28号」を見せて、果たして喜ぶだろうか?ゾンビ映画を観て、始祖に興味を持ってくれた人だけがロメロやフルチを観てくれれば良い。ゾンビはよたよたと歩くべきか?それとも俊敏に走るべきか?いや、ゾンビ映画を観る人間がいる、ということが重要なのだ。

 

 ということで、僕の考案したゾンビ映画を馴染ませるためのステップ、如何だっただろうか。僕はまだ実行したことのない(というかほとんど旧作だし、家で女の子と一緒にDVD観るまでに漕ぎつける方法をまず教えてほしい)プランなので、是非皆さまにはこれを試していただいて、結果の如何をお教えいただけたら嬉しいです。最終的にさぁ、「ゾンビ・マックス!怒りのデス・ゾンビ」とかを楽しんで観てくれるようになったらいいよね…などと考えながら、僕は今日も誰にも勧められないようなババ映画を引いてはふて寝をしている。