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人生の感想。映画のネタバレなどする場合があります。

輝け個性!サイコキラーの見本市「ファンハウス」

 何の影響だかはまったく記憶にないが、僕は幼い頃から個性がバラバラのキャラクター達が一堂に会するというフォーマットが好物で、格闘ゲームのキャラクター達や最近流行りのスマホゲーム「Fate/Grand Order」、若しくは「リーグ・オブ・レジェンド」や「アベンジャーズ」などの映画が大好きだ。「キングダムハーツ」や「大乱闘スマッシュブラザーズ」などのクロスオーバーもたまらない。異なる性別や色彩、体格、戦術などがかわるがわる登場するパレード的な楽しみや、タイプが違う故に展開されるチグハグな会話がたまらなく可愛く見えてしまう点などが、僕が思うそれらの主な魅力であるが、何の気なしにTSUTAYAに入ってみたら、これまた魅力的な映画を見つけてしまった。お化け屋敷を舞台としたホラーコメディ「ファンハウス」である。

 

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 2016年、アメリカ。ハロウィンで世間が沸き立つ中、大規模なお化け屋敷が新たにオープンした。実際の凶悪殺人事件をなぞらえたコンセプトが物議を醸すが、コスプレをしてバカ騒ぎを楽しみたい若者たちはこぞってお化け屋敷に集まってきていた。

 同じ頃、凶悪殺人犯を多数収容する精神病院では、クイン記者に成りすました謎の女によって院長が殺される事件が発生。人肉をレストランで提供していたシェフ“アニマル・ザ・カニバル”、患者の歯をすべて抜き去ってしまう“イケメン先生”、人間の剥製作りを趣味とする“剥製師”、地下プロレスのレスラーで、対戦相手を試合中に殺害した“ピエロのロッコ”、カルト教団の教祖で史上最大の集団自殺を煽った“知性のマニー”ら、計5人の殺人鬼が解き放たれてしまう。しかして謎の女の正体は、マニーの娘で、犠牲者の目と口を縫い閉じてしまう殺人鬼“ステッチ・フェイス・キラー”なのであった。

 6人はお化け屋敷に潜入し、オーナーをも手に掛ける。実はすべては、ステッチ・フェイスがオーナーのセフレとして糸を引き、自分たちをモチーフとしたお化け屋敷を作らせ、本人たちが役者に成り代わり、来場者を演出に見せかけて本当に殺してしまおうという、マニーの周到かつ大胆な殺人計画だったのだ!

 女性保安官のホッジスと副保安官のドイルは、ステッチに殺された本物のクイン記者のメモから事件を悟り、お化け屋敷へ。そして、近所のダイナーで働くモーガンら若者グループも、バイト仲間で楽しもうとお化け屋敷へ向かっていた。

 本物の凶悪殺人犯が待ち受ける阿鼻叫喚のファンハウスから、モーガン達は生きて帰れるか…?

 

 

 この映画の感想を過不足無く正確に一言に当てはめるならば、「惜しい」に尽きる。惜しさしかない。ホント、もうちょっと頑張ってほしかった。

 精神病院の院長が、5人の殺人鬼の伝説を偽クイン記者に語るシーンまではウキウキワクワクなのだが、いざ彼らがお化け屋敷に着いてみると、なんかキャラも力も弱いのだ。各々の事件現場を模した演出の数々を見て、シェフは「わしゃチーズケーキ職人か!」と謎のツッコミ。剥製師は「剥製の道具もないじゃないか」と落胆。そうだそうだ、それらは紛い物でしかない。ホンモノの恐ろしさを見せつけてやれ!とこちらの期待を煽っておいて、なんとシェフは警備員を殺して警備室に陣取る。え、人肉料理は?イケメン歯科医と剥製師は、この辺りから完全に空気と化す。それなら元のお化け屋敷の飾りでいいじゃない。
 その分殺人レスラー・ロッコの出番は多めだ。ラリアットパワーボムシャイニングウィザード、ド派手なプロレス技で浮かれポンチを皆殺しだ!!…と思いきや、首を捻ったり壁に叩きつけたり、やってることは至極地味。さっき教祖も同じ殺し方してましたよ。
 揃いも揃ってなんか垢抜けない凶悪犯達。ステッチ・フェイスが結果1番目立つが、こちらもビジュアルとキャラが完全に「バットマン」のハーレークインをパクってるっぽいというなんだかなぁ…なこの感じ。
 極め付けに、シェフ、歯科医、剥製師の3人は民間人の反撃でアッサリ退場。マイケル・マイヤーズの爪の垢でも煎じて飲んでなさい。

 

 ちなみに精神病院院長を演じるのは「エルム街の悪夢」でお馴染みのロバート・イングランド。ジャケットであんなに黒幕ヅラしてるのに、すぐ死んじゃう上に普通に善人なのである。そんな雑なロバートでホラーマニアが釣れたら苦労はあるまい。

 

 さて、物語が進むと、ホッジス保安官の母親はなんとマニーの教団の一員として集団自殺に巻き込まれており、その敵討ちに燃えていたことが分かる。「悪魔のいけにえ2」を観た時も思ったのだが、これ、普通に正義感が強い人とかではダメなのだろうか。両手にチェーンソーを持ってフンスフンスといきり立つデニス・ホッパーも本作のホッジスも、実は身内がやられていたという大事な話を尺の都合かテンポの問題か、短い回想か思い出話で片付けてしまう。するとそれはもう盛り上がりとか理由付けというよりは余計な情報のレベルになってしまうような気がするのだ。それとも、そのくらいの理由がない限り、いくら警察や保安官でもヤバい奴には関わりたくないということなのだろうか。もしもそうならやるせない話である。
 舞台が2016年ということで、犠牲となった仲間の写真をインスタにアップする若者やヒラリー・クリントンのコスプレなど、現代風のネタも登場するが、風刺的なメッセージ性は皆無。ハロウィンでバカ浮かれる奴らこっ酷く死ねばいいのに的な、八つ当たり的パッションで作られた映画と見て良いだろう。「サタンクロース」くらいぶっ飛んでくれれば名作にもなり得るのだが、今ひとつインパクトに欠け、ホラーにもコメディにも中途半端で振り切れてない感じが、鑑賞前の期待値の高さだけに残念だ。

 

 「ファンハウス/惨劇の館」「マーダー・ライド・ショー」「殺人遊園地」など、お化け屋敷を舞台にしたホラー映画は数あるが、申し訳ないが正直本作はこのいずれにも到底及ばないという印象だ。ただ、ゴアシーンは結構頑張っているし、全体的にノリが軽く観やすいので、お友達とワイワイ観るにはちょうどいいのではないだろうか。
 世はバレンタインだと言うのに僕は何をやっているのだろう。女の子と浮いた予定があるでもなく、ヒネたホラーマニアとして「血のバレンタイン」を観るでもなく、ヘンな過ごし方をしてしまったものだ…。
 バイト終わりにフリーターのお姉さんから手作りお菓子をいただきました。わーい。