人生が楽しい

人生の感想。映画のネタバレなどする場合があります。

浮くことを恐れるな!オタク頑張り映画の隠れた名作「ゾンビ・ハイスクール」

 「新感染 ファイナル・エクスプレス」について書いた記事で、僕は文の終わりをこう結んだ。
 『満足度は僕が保証するので、是非皆さまにも観ていただきたい。もしご満足いただけなかったら、この間ディスクユニオンで108円で買った「ゾンビ・ハイスクール」のDVDを先着一名様にプレゼントいたします。』
 中古店で破格の108円で売られ、僕でさえ簡単に人に差し上げても構わないと書いた「ゾンビ・ハイスクール」、果たしてどんなゴミ映画なのか?
 とんでもない、僕はこの映画が大好きで、是非こちらも皆さまに楽しんでいただきたいと思ってああ書いたのだ。

 

 

f:id:hajino:20180209222045j:plain

放課後の居残り部屋には、いじめっ子の筋肉バカ・ブラッド、その恋人でチアリーダーのジャネット、ブラッドの悪友で同じく筋肉バカ・ジミー、ヤク中のバカ・アッシュ、ゴスパン衣装のゾンビマニア・ウィローらが集っていた。成績優秀だがダサいオタクのエディも訳あって居残り部屋に入ると、突然教室の隅で蹲っていた男子生徒が女教師の首筋に噛み付いた!
 助けを呼ぼうと教室を出ると、いつの間にか高校はゾンビの海になっていた。一行は「ここの生徒なら死んでも寄り付かない」と踏んで図書室へ籠城することに。
キャラクターの強すぎる個性やエディ、ジャネット、ウィローの三角関係なども背景に、6人の高校生が生き残りを懸けてゾンビとの戦いに身を投じる…。

 

 よくある(と言っちゃ身も蓋もないが…)冴えない男がパニックの中で奮闘するフォーマットの映画で、登場人物はバカしかおらず、物語は終始ゆる〜いギャグのテイストで包まれている。上映時間も80分少々と短めで、どんな気分の時でもお手軽に楽しめるスナック・ムービーだ。
 ゾンビのタイプは、作中では緩慢なヤツと素早いヤツの2タイプがいると説明されているが、実際には素早いタイプは居残り部屋の最初のゾンビ一体のみで、後はノロノロのロメロ型ゾンビ。集中力は局地的で、コッソリ歩けば難なく横をすり抜けられる…というか廊下にいっぱいいても「ワーッ!」と走り抜ければ案外いけちゃうイージー仕様。運動が苦手なオタクでも廊下いっぱいのゾンビを皆殺しに出来ちゃう緊張感の無さと捻りのない設定がネットでは酷評されているが、僕は演出によって都合のいいハッタリも効く柔軟さは好きだし、突飛な設定を加えず手堅く作られたゾンビも好みなので問題なし。
 登場人物の名前には、ブラッド、ジャネット、エディ。ん?「ロッキー・ホラー・ショー」を意識しているのか?しかしそれだとジミーとアッシュが説明できない。ゾンビファンとしてはアッシュと聞くと「死霊のはらわた」を思い出すが、いやしかしあまりにも統一感が無さすぎる。そんな名前の人いっぱいいるし、偶然でしょう。と思いきや、図書室の名前が「サヴィーニ・ライブラリー」。確信犯だコレ!!中学生時代、映画研究部で、登場人物の名前をすべてゾンビ映画監督の名前の捩りにしてゾンビ映画の脚本を書いた僕とやってることが同レベルだ。じゃあジミーも何かのキャラクターの名前なのだろうか。分かる方いたら教えてください。
 図書室に籠り一息ついた一行は、やがて鬱憤トークにもつれ込む。プロムクイーンも務めるスクールカーストの頂点たるジャネットは、「人気者は周りから服も化粧も彼氏もジャッジされるし、嫉妬されまくってツライの!人気のないあんた達には分からないでしょうけど!」などと宣い、ウィローらはウンザリ。

 しかしそんなジャネットにゾッコンなエディを見て、エディに想いを寄せるウィローは一喝。「みんなジャネットを愛してるんじゃなくて、ジャネットに惚れるべきだってみんなが思ってるからそうしてるだけ!浮くのが怖いなんてバカみたい!」ゾンビの襲来によってスクールカーストも糞もなくなった今になってする話か?というツッコミはさておいて、本作のテーマは恐らくここだ。いじめられ、オタク趣味を恥じながらオドオドと暮らすエディ、スポーツと美貌によって学園の頂点に君臨するブラッドとジャネット、長い物に巻かれ、そこそこの位置をキープする凡人ジミー、カースト制など何処吹く風と我が道を行くウィローとアッシュという構図がパーティの色彩を際立たせる。そしてエディはやがて体面に縛られ浅ましさを晒すジャネットに辟易し、本当に愛すべき女性の存在に気付くのだ。世間から溢れることを恐れず、愛するものを恥じずに生きることを良しとする筋肉少女帯銀杏BOYZ大好き少年だった筆者はウィローの生き様に強く共感し、ウンウンと頷きながら観ていたものだ。

 アクションはさほど派手ではないながらも、ゾンビの造形はかなり頑張っているし、図書室のトークも、人によってはダレてるように思うかもしれないが、僕は退屈しなかった。何よりギャグがいい感じにくだらないので、軽いノリのホラーコメディとして、なかなかに楽しめよう。

 

 「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ゾンビランド」など、冴えない主人公が絶体の危機を前に一躍頑張る映画は人気だが、この「ゾンビ・ハイスクール」もそれらに引けを取らない隠れた名作と言っていいと思うのだ。「終末の過ごし方はロメロの映画で学んだよ」と歌うSpritesのエンディング曲「George Romero」も泣かせてくれる。あたかもゴミ映画の話のような紛らわしい書き方をしてしまい、申し訳ありませんでした。本当のゴミ映画というのは例えばそう、「超科学実験体ゾンビロイド」のような映画のことを言うのです。

 

 次回、ゴミ映画への怒りが炸裂!乞うご期待。